ポール・ニザン
ペンション・モーツァルト・オーナーに感銘を与えた著名人たち
ポール・ニザン / 文学者
「僕は二十歳、この季節を人の一生で一番美しいものだとは、誰にもいわせない」
煌めくような有名な冒頭句で始まる『アデン・アラビア』この書はわが青春のバイブルでした。
ランボーを思わせるその砂漠的体験。
砂漠は経験純化の核を作り、命を真っ裸にし、その殉教者を錬成する。
余分なモノ、すべての虚偽虚飾を焼き尽くす。
確かに『アッラー!』なのだ。
1930年代、第二次世界大戦前夜の荒れ狂う時代をユマニテへの燃えるような熱に焼かれて、流星のように闇夜を切り裂きダンケルクに戦死したニザン。
人は時代の子である、時代と人が錯綜する。
しかし、その時代の足かせを破り、普遍性の高みに命を捧げる人をもまた時代は生み出すのだ。
彼の伏した大地の草の葉の一粒の露は、彼の瞳に世界のすべての美しさを写して手向けとなしたであろうか。